「ひとめぼれしました。」――お客様のレビューより

長財布 ALBA Alice(アルバアリス)ピンク ― FRUTTI DI BOSCO
erutuocという店名は、couture(クチュール)の逆さ読みです。
老舗が挑戦したかったもの、クリエイターが本当に作りたかったものを、限定製作して発表する場所。
ひと目見た瞬間のときめきはもちろん、一目見ただけではわからない、"クチュールの裏側”をご紹介して、手に取っていただけるきっかけになれたら幸いです。
「アートレザー」の自由な世界を知ってほしい。
なぜ、erutuocはこの作品を紹介するのか

さて、ここからが本題です。
上の基準でいうと、この財布は二つに該当します。まず「知ってほしい技術」。この財布に使われているのは、アートレザーと呼ばれる革です。いまでこそ検索すればいろいろな商品が出てきますが、erutuocとFRUTTI DI BOSCOは、この言葉を20年近く前から使ってきました。革といえば無地が当たり前で、柄のある革は「プリント」と呼ばれて一段低く見られていた頃に、一枚の革を一枚の絵のように仕立てるイタリアのレザーを見つけて、名前をつけるところから始めました。

もうひとつは「強いメッセージ」。この革には、デザイナーがどうしても忘れられなかった一枚の革の記憶と、「初めてアートレザーを目にする方に、いちばん最初に手にして頂きたい」という言葉が込められています。(この話は、あとで詳しくします。)
実はこの財布、長く愛されている財布でもあります。erutuocの誕生とほとんど同時に生まれたこの作品には、「ひとめぼれしました。」など多くの嬉しいお声をいただいています。
物語が生まれる、代官山の黒いメゾン。
女優やモデルも通う、代官山のハンドバッグブランドFRUTTI DI BOSCO
だれが、つくっているのか
FRUTTI DI BOSCO(フルッティ ディ ボスコ)。イタリア語で「森の果実」を意味する、東京・代官山のレザーブランドです。はじまりは、ある映画女優の"なんともわがままなオーダー"に応えてバッグをデザインしたことでした。以来、「わがままがよく似合う女性」を合言葉に、女優やモデルがひそかに通う知る人ぞ知るメゾンとして続いてきたブランドです。
ところでこのブランドのデザイナーには、ちょっと素敵な習慣があります。毎年のように、イタリアのボローニャへ通うんです。世界最大級のレザー展示会「LINEAPELLE(リネアペレ)」。世界中のタンナーとバイヤーが集まる会場を、ギャラリーを歩くように巡って、一枚の絵画のような革の前でだけ足を止める。すっかり顔なじみになったタンナーが、奥からこっそり見せてくれる革もあれば、世界でFRUTTI DI BOSCOだけが扱う特注の革もある。コレクションは、その時間から生まれています。
初めて見たのに、ずっと探していたような。
なにが、特別なのか
この財布のレビューは、各店舗あわせて800件を超えています。その中に繰り返し現れる言葉が、二つあるんです。
「ひとめぼれしました」
「ずっとこういう財布を探していました」
お客様のレビューより(ニュアンスそのままに、少しだけ整えています)初めて見たのに、ずっと探していた。矛盾しているようで、していないんですよね。この柄は誰の記憶にもないはずなのに、どこか「私のための柄だ」と思わせる何かがある。その正体を、erutuocなりに説明してみます。
まず、この革には誕生の物語があります。きっかけは、デザイナーがイタリアで偶然出会った一枚の花模様の革でした。まるでモネの『睡蓮』のように、繊細で柔らかなタッチで移ろう花が描かれていた。世界中の革を見てきたデザイナーでさえ、はっと心を奪われるほどだったといいます。どうしてもその革が忘れられなくて、イタリアのタンナーに特注して誕生したのが、Alice(アリス)レザーです。
この革の美しさを言葉にするなら、erutuocは三つ挙げます。曖昧さ、ニュアンス、透明感。
花模様の輪郭は、くっきり塗り分けられていません。花のピンクは地のアイボリーへ、境目を曖昧にしながら滲んでいく。普通の印刷なら「にじみ」という欠点です。でもアリスレザーでは、この曖昧さこそが設計なんです。色と色のあいだに逃げ場があるから、柄が図案ではなく、絵に見える。
その上に、透明なエナメルの層。エナメルというと硬質にぴかっと光る素材を思い浮かべるかもしれませんが、この革のエナメルは、ガラスのように色の上に乗っているというより、水面のように色の上に張っています。だから光の入り方で表情が変わる。言葉を尽くすより、実際の光を見ていただくのが早いかもしれません。少しだけ、動画をどうぞ。
撮ったままで、じゅうぶん美しい。それがいちばん伝わる資料だと思ったので、そのまま載せています。窓辺では花が浮かび上がって、夕方の室内では全体がしっとり沈む。同じ財布なのに、朝と夜で違う顔をする。レビューに「見るたびに発見がある」と書いてくださった方がいましたが、それはこの透明な層の仕事です。
ALBAという名前は、イタリア語で「夜明け」。空の色がまだ決まっていない時間のことです。曖昧さ、ニュアンス、透明感――三つとも、はっきりしないもの、数値にできないものですよね。でも、人がものを長く好きでいられる理由って、たいていこっち側にあると、erutuocは思っています。
手仕事から生まれる、スマートな佇まい。
どうやって、つくられているのか
ここからは、erutuocだからこそご紹介できる「クチュールの裏側」を。erutuocという店名がcoutureの逆さ読みだという話は、冒頭に書きました。クチュールの裏側まで、きちんとお話ししたい。そんな思いもこめた名前なんです。表からは見えない工程と素材の話。値札の数字の内訳は、だいたいこの見えない場所にあります。
まず正直に言うと、エナメルレザーは職人泣かせの素材です。表面に張りがあるぶん、力のかけ方をひとつ間違えると、跡が残る。しわが寄る。そしてその傷は、二度と消えません。華やかな絵をまとった革を、跡ひとつなく、よれひとつなく仕立てあげること。実はこれ、革の世界でも指折りに難しい仕事なんです。
そしてALBA Aliceの仕立てには、もうひとつの挑戦があります。薄く、すっきりと仕上げること。カードポケット11か所、札入れ、小銭入れ。これだけの収納を重ねながら、厚みは約2.2cm。手にすると、華やかな絵をまとっているのに驚くほどスマートで、バッグの中でも場所をとりません。女性的なのに、甘くない。この絶妙なバランスは、クラフトマンの手が一枚ずつ整えているものなんです。
革は一枚のまま使うのではなく、場所によってコンマ数ミリ単位で厚みを変えて漉きます。重なる部分は限界まで薄く、力のかかる部分には強さを残す。11か所のカードポケットを重ねてなお2.2cmに収まるスマートさは、この見えない引き算の積み重ねです。
エナメル面の下には、表からは見えない芯材が入っています。厚ければ確かに型崩れしませんが、それでは野暮ったい。薄さを保ちながら、エナメルの絵にしわもたわみも出させない。革・芯・裏地の三層の釣り合いを、コンマ数ミリで探る仕事です。
エナメルは針の穴が戻らない素材です。縫い目がわずかに引き攣れただけで、絵がよれて、そのまま傷になる。だからこの財布の縫製は、やり直しがきかない一発勝負を、端から端まで続けることになります。熟練のクラフトマンにしか任せられない理由です。
そして、「クチュールの裏側」としてご紹介したい点が、もうひとつあります。財布の内装です。
ALBA Aliceを開くと、濃淡のある淡い色のレザーが広がります。「プルアップレザー」――オイルを革の内部に染み込ませたあと、折り曲げたり引っ張ったりして、自然な風合いのむら感を出して仕上げる特殊な革です。均一に染めるより、ずっと手間がかかります。なぜ、開かなければ見えない場所に、それほどの革を使うのか。内側は、使うたびに指が触れる場所だからです。プルアップレザーは触れるほどに手になじんで、時間とともに表情を変えていきます。表の絵にひとめぼれして買った財布が、三年後には内側の変化で手放せなくなっている。そういう設計なんです。
カードポケットの奥には、イタリア産のハラコ。しっとりした毛並みの、思わず指で何度もなぞりたくなる素材です。開いた本人だけが知っている、ひそやかな贅沢。オートクチュールのドレスが、裏地にこそ手を尽くすのと同じ考え方です。
世界にひとつ、オーダーメイドのような作品です。
ご注文の前に、お話ししておきたいことひとつだけ、先にお話ししておきたいことがあります。この財布、柄のご指定は承っておらず、どんな絵が届くかは、箱を開けるまでのお楽しみなんです。
アリスレザーは、一枚の大きな革に絵が描かれています。財布はそこから裁断されるのですが、どこを切ってもいいわけではなくて、クラフトマンが革の前に立って、ウォレットにしたときに最も美しく見える場所を一本ずつ探して、カッティングの位置を決めていきます。まるで一筆一筆、ウォレットに花模様を描くような仕事です。
だから、どの財布も絵の別の場所から生まれています。花が大きく入る個体もあれば、余白が美しく残る個体もある。写真と同じ柄の財布は、この世に一本も存在しません。レビューの中に「思っていた色味と違った」という声が時々あるのは、この性質のためです。erutuocはその声も、大切な事実としてそのまま受けとめています。
これを「当たり外れ」と感じる方がいらっしゃるのも、自然なことだと思います。ただ、20年この革と付き合ってきた立場から、お伝えしたいことがあります。この革は、絵のどこを切り取っても、ちゃんと絵になるように作られている――そこにこそ、タンナーとブランドはいちばん時間をかけてきたんです。
それでも、届いた柄がご自身の想像と少し違うことは、あるかもしれません。だからerutuocはこの財布を、「写真の商品をお届けするもの」というより、「あなたの一枚と出会っていただくもの」としてお届けしています。どんな絵が届くかは、erutuocにとっても小さなサプライズ。その出会いごと楽しんでいただけたら、この財布はいちばん幸福なんじゃないかなと思うんです。
販売方法について
どこで、いつ、出会えるのかFRUTTI DI BOSCOの商品は、公式取扱店だけで大切に扱われていて、セールを行わない方針です。価値を下げずに、長く愛していただけるものだけをお届けする――ブランドとerutuocの、共通の約束です。erutuocはその公式取扱店のひとつとして、このブランドを物語ごとお預かりしています。
「いつ」については、正直なところ、お約束するのが少し難しいんです。一枚のアートレザーから一点ずつ仕立てるため、一度にご用意できる数がごくわずかで、本数と期間を限ったオーダー受付になっています。完売すると、次のお届けが2か月以上先になることもあります。急かしたいわけではなくて、そういう作り方の作品なのだということを、書き添えておきます。
商品詳細
| 商品名 | ALBA Alice(アルバアリス)ピンク 長財布 |
|---|---|
| ブランド | FRUTTI DI BOSCO(東京・代官山) |
| レザー | アリスレザー(イタリア特注アートレザー/キッドスキンにエナメルコーティング) |
| 内装 | プルアップレザー(ゴートスキン)、イタリア産ハラコ |
| 仕様 | カードポケット合計11か所、札入れ、ファスナー式小銭入れ、外側ポケット |
| サイズ | 約 横19.3cm × 縦9.0cm × 厚み2.2cm(外寸)/約160g |
| お手入れ | 乾いたやわらかい布で軽く拭くだけで、艶が保てます。 |


































































